ブレーキシステムは、あらゆる自動車において非常に重要な部分です。英国のフェデラル・モーグル社は、世界中で自動車用ブレーキシステム部品を製造しています。同社のブレーキパッドには黒色の防錆コーティングが施されており、ブレーキパッドを作動中のスプレー水による損傷から保護します。同社では、元々、この黒色エポキシコーティングが製造ラインで塗布された後の硬化用として中波長赤外線ヒーターを使用してきました。しかし、需要増に伴い、従来の乾燥工程では生産が追いつかず、競争力を維持するためにボトルネックを解消しなければなりませんでした。
加熱/硬化プロセスにはさまざまな制限がありました。1つには、照射エリアはブレーキパッド全体ではなく、表面でのみでした。また、生産スペースに限りがあったため、新しい加熱システムは既存のスペースに収めなければなりませんでした。中波長赤外線は、エポキシコーティングの溶融と硬化に理想的であったため、応答性の早いタイプの中波長ヒーターを搭載した赤外線加熱システムを選択しました。このタイプのヒーターは、有効な中波長赤外線を放射する一方で、プロセスの速度アップに必要な電力を供給します。しかしこれ以上に、従来の中波長赤外線ヒーターの立ち上がり、立下りにかかる時間が数分であったのに対し、このヒーターはたった数秒という応答性がありました。選択した最新ヒーターの応答速度はまた、制御のし易さも意味しています。つまり、一連のブレーキパッドに合うように乾燥炉内の温度プロファイルを得ることが可能であることを意味します。
新しい162kWの赤外線システムには30本の応答性の早い赤外線ヒーターが装備されています。最初に、粉末を融点にし、次に確実に硬化させるために正しい温度でコーティングされた製品を維持します。最新の赤外線システムを設置したことで、一連のブレーキパッドの粉体塗装乾燥の量を4倍にしました。
さて、赤外線加熱が自動車産業で初めて用いられ始めたのは1950年代で、赤外線加熱は車体の乾燥において革新的と考えられていました。この当時の赤外線ヒーターは遠赤~中波で金属管、セラミック、不透明石英ガラスでできており、動きが遅いものでした。石英ガラス製初の赤外線ヒーターは不透明な管から成り、外部反射板が取り付けられていました。応答は非常に遅く、特に強力というわけではありませんが、非接触での動作により、以前使用されていた熱風炉に比べて大きな利点がありました。
自動車の近代化に伴い、プラスチック部品および電子機器がますます普及するようになりました。これは、プラスチック部品や電子機器は熱風に長時間耐えることができないため、加熱プロセスをより正確に行う必要性がでてきました。80℃で長い滞留時間を許容できる加熱プロセスはほとんどなく、必要とされる時に必要な個所に加熱する傾向へと変化してきています。
生産速度の一層の高速化と低コスト化への圧力により、より効率的な熱源の開発がさらに推進されました。