UV(紫外線)硬化とは?原理や特徴、用途について

1960年代、UV硬化は生産プロセスの一大改革を起こしました。あらゆる産業分野で使われているインク、コーティング、接着剤などの硬化を、熱の代わりにUVエネルギーを照射することで、「乾燥」の概念を「瞬時硬化」へと変えました。

従来の熱とエアーによる乾燥法では溶剤が揮発し、コーティングの膜厚は初期の半分以下に減少するうえ、公害物質を排出します。それがUV硬化の場合には、コーティング厚の変化はなく蒸発物もありません。そのため、時間がかからず、廃棄物が少なく、エネルギー消費が減り、さらに公害物質の発生をはるかに抑えることができます。

UV硬化は、従来の熱硬化法に比べて、飛躍的に生産管理幅が広く、コスト低減を図れるものとして、今や多くの用途で採用されています。また、UV(紫外線)硬化技術を利用した画期的な要素技術が開発され、高付加価値を備えた応用製品が次々と生まれています。UV硬化は、生産性の向上、コスト削減、公害発生の抑制に貢献し、さまざまな最終製品に付加価値をつけることができます。

目次

UV(紫外線)硬化の基礎知識

UV(紫外線)硬化とは?

UV(紫外線)硬化プロセス

UV硬化とは、「光重合」と呼ばれる光化学反応プロセスです。紫外線エネルギーを用いて、液体を固体に(モノマーをポリマーに)化学変化させる技術です。UV硬化材料は一般的に、モノマー、オリゴマー(プレポリマー)、光重合開始剤、その他の添加剤で構成されています。

UV(紫外線)を照射すると、光開始剤は励起され、開裂し、ラジカルまたは酸を発生します。発生したラジカルまたは酸により、モノマーが重合し、ポリマーに転換します。

UV硬化反応は、材料中に含まれる光重合開始剤がUVエネルギーを吸収し重合開始活性種を生成する光化学プロセスと、生成した開始活性種が重合を開始し、ポリマー生長が進行する中で架橋ネットワークを形成する熱的な重合プロセスとの2つのプロセスにより成り立っています。

紫外線の光によって数秒でUV硬化樹脂が硬化し、乾燥するまで長い時間がかからないため、エネルギー消費を抑えられます。また、無溶剤化も可能なため、大気中への放出物も少なく、環境汚染物質の発生を抑えることができる優れた技術です。

UV硬化反応と熱硬化反応の違い

紫外線硬化と熱硬化の違い

UV硬化反応は、材料に含まれる光重合開始剤がUVを吸収し、反応活性種を生成することによって、重合反応および架橋反応がスタートします。そのため、UV硬化によって得られる硬化膜では、重合開始点を中心とした構造体が形成されます。重合の生長反応は、重合活性種の寿命(ミリ秒オーダー)内で進行し、短時間で反応が終了します。そのため、光重合開始剤を中心とした重合がスタートする領域では密となる構造をとり、重合の停止反応がおこる領域では疎となる構造をとるというように疎と密の部分が存在する比較的不均一な構造体が形成されます。構造体の密な領域では、非常に架橋密度を高くすることができ、硬度の発現に寄与しますので、硬度の高い硬化塗膜を得ることが可能です。

一方で、熱硬化反応は、物質を活性化状態にするのに必要な最低エネルギーである活性化エネルギーによって反応速度が支配されます。UV硬化反応に比べて、長い時間(分~時間オーダー)をかけてゆっくりと反応が進行するため、構造的に安定な状態を保持ながら反応が進行します。熱硬化では、高温下で反応が進行するため、反応後も構造体の熱的な構造緩和が進行し、比較的ひずみの少ないより均一性の高い構造体が形成されます。平均的な架橋密度は、UV硬化反応のそれとくらべて低くなり、硬化塗膜の硬度もUV硬化膜とくらべて低くなります。

UV硬化の特徴

  • 高生産性:硬化時間はたったの0.1~数秒なため、生産プロセスにかかる時間を大幅に短縮することができます。
  • 低熱性:樹脂フィルムなど熱に弱い基材への照射が可能なため、変形や変質することなく硬化できます。
  • 品質の安定性:適切な光照度や波長の選択により、耐摩耗性、耐汚染性、耐候性、光沢度、密着性、柔軟性、形状など、良好な硬化物特性が得られます。
  • 作業効率の向上:光を瞬時にON/OFFできるため、熱硬化と比べ装置の立ち上げにかかる時間を短縮することができます。
  • 環境対応性:無溶剤で使用が可能なため、VOCやHAPなどの環境汚染物質の発生がなく、二酸化炭素の発生もありません。
  • 省エネルギー・省コスト:年間エネルギーコストは熱硬化に比べて極めて低く、無電極UVランプシステムは長寿命なためランニングコストも抑えることができます。
  • 省スペース:熱硬化で使われるような複雑で大型な設備を必要とせず、設置面積を大幅に縮小することができます。

UV(紫外線)硬化の用途

UV硬化技術を利用した革新的な要素技術が開発され、高付加価値を備えた応用製品が次々と生まれています。皆さまの身の回りにも数多く存在している携帯電話、各種ディスプレイ、自動車部品、フロアシートなど、その応用製品に限りはありません。例えば、

  • コーティング、インク、接着剤のUV硬化は、自動車産業において内装や外装用の様々な部品に、耐傷付性や接着性、耐薬品性、耐久性などの機能や美しさを付与するために使用されています。硬化温度が低く、ほぼ瞬時に硬化するため、組立部品や熱に弱い部品のコーティングや硬化が可能で、次の工程への移行がスムーズに行われます。
    詳しくは 自動車産業におけるUV硬化
  • UV硬化型粘着剤は、永久的または半永久的な、または剥離可能な接着が必要な製品に用いられています。UV硬化はこのような粘・接着剤を製造するために欠かせない環境にやさしいプロセスです。
    詳しくは 粘着剤(PSA)のUV硬化

 各業界におけるユースケースを詳しく知りたい方は、「UV(紫外線)硬化の用途」をご覧ください

UV硬化でよくある課題と解決策

紫外線によって瞬時に乾燥するUV硬化型インキが印刷市場に導入され、半世紀以上が経過しています。UV硬化材料は印刷分野だけでなく他の分野にも展開され、新たな機能材料へと進化してきまし。

UV硬化技術は、光学機能材料の製造プロセスに不可欠で、最終製品にも応用されるようになっています。UV硬化技術は、技術が成熟していると見られがちですが、依然として、解決すべき課題が存在し、光源やプロセス条件の最適化が重要となっています。プロセス技術の観点から、UV硬化プロセスに関する課題を共有し、最適な解決策を紹介しています。

UV(紫外線)硬化に用いられる「UVランプ」製品とは?