赤外線ヒーターの特徴といえば何でしょうか。さまざまな特徴を持つ赤外線ヒーターですが、「熱を伝える媒体を必要としない」という点が代表的な特徴の一つです。
赤外線ヒーターは赤外線を照射することでものを温めますが、赤外線自体は熱を持っているわけではありません。ではなぜ赤外線が当たった場所が熱くなるのでしょうか。
赤外線が照射され物体に当たると、表面で反射されるもの、通り抜けて透過するもの、そして物体へと吸収されるものと、三つの状態にエネルギーが分散されます。このうち、物体に吸収された赤外線のエネルギーが熱を生み出します。赤外線は電磁波の一種であり、波長を持つエネルギーです。物体に吸収されるとその波が、物体の分子運動と共振し、増幅させます。こうして分子運動が活発になり、分子同士の摩擦により熱が生じるのです。
この赤外線による加熱作用は、太陽の光を浴びると温まるのと同じ原理です。太陽が発する電磁波には、明るく見える可視光線のほか、赤外線も多く含まれています。空気がなく、マイナス270℃の宇宙空間を越えて届く太陽光がものを温めるのは、この赤外線の加熱作用によるものなのです。
対流式加熱では熱を伝えるための媒体となる空気を温め、それにより対象に熱を伝えます。しかし赤外線による加熱では、電熱のための媒体を必要としません。そのため、媒体を一度温めてから対象に熱を伝えるという二段階の伝熱過程もないのです。
また、赤外線加熱は照射する赤外線の波長により、特性が変わります。集中的に高温加熱するか、全体をまんべんなく加熱するかといった、用途や対象に適した加熱方法を容易に選択することが可能です。
こういった赤外線加熱の仕組みにより、赤外線ヒーターは従来型のヒーターに比べ効率よく加熱することができるのです。